私は煙草を喫んだ。生きようと私

「ポケットをさぐると、


小刀と手巾に包んだ


カルモチンの瓶とが出て来た。


それを


谷底めがけて投げ捨てた。


別のポケットの煙草が


手に触れた。


私は煙草を喫んだ。


一ト仕事を終えて


一服している人が


よくそう思うように、


生きようと


私は思った。」

三島由紀夫
金閣寺
末尾 むすび