日本語のハ行音は、ファ・フィ・フ・フェ・フォ

「日本語のハ行音は、


古い時代には


両方の唇を近づけて発音する音


であったから、


ファ・フィ・フ・フェ・フォ


のように発音されていた。


骨(Fone)がアイヌ語


ポネとなっているのは、


そうした事情を考えに入れると、


日本語とまったく一致する形


と見てよいだろう。


しかし、


アイヌ語には別にケウ(kew)という語があって、


今は合成語の中だけに使われている。


おそらく、これが、


骨を意味する古いアイヌ語であったらしい。


ちょうど、


肺の日本語フクフクシが亡びて


シナ語ハイによってとって代られたように、


アイヌ語ケウは、


日本語ホネによってとって代られ、


古い言葉は合成語の中だけに


残ったのである。」

大野晋
『日本語の起源』岩波新書 p.46