辞典と名のつくものは、集めるのが大好きである

「私は


フランス語の辞書だけでなく、


およそ辞典と名のつくものは、


百科事典をも含めて、


それを集めるのが大好きであるが、


日本語の辞書でも、


古本屋などで


変わったものを見つけると、


乏しい財布の底をはたいて


それをかいこむことにしている。


そして暇があると、


それを開いて楽しむことにしている。


辞書というものは、


どっから開いても読めるし、


また、


どこで読むのをやめてもさしつかえない。


したがって忙しいときの


息ぬきに読むのに


最も最適だし、


逆に、


手持ちぶさたで困っているときには


これほど暇つぶしに好適な本はない。」

河盛好蔵
「辞書を引く楽しみ」『辞典のはなし』角川書店編 昭和40. p.13