どの入り口がぜったいに主要な入り口であると断定することはできない。

「一つのテキストを解釈するということは、それに一つの意味(多かれ少なかれ根拠のある、多かれ少なかれ大胆な)を与えることではなく、反対に、それがいかなる複数から成り立っているかを評価することである。まず、いかなる再現の(模倣)束縛も貧しくすることのない輝かしい複数のイメージを思い浮かべよう。この理想的なテキストにおいては、網目が多様で、いかなる網も他の網の上に立つことがなく、互いの間でたわむれる。このようなテキストは、記号表現の銀河であって、記号内容の構造ではない。それは始まりをもたず、可逆的である。いくつもの入り口からそれに近づくことができ、どの入り口がぜったいに主要な入り口であると断定することはできない。それが動員するコードは見渡すかぎり横に並び、そのうちのどれと決定することはできない。」
ロラン・バルト『S/Z』冒頭