夢は《モノローグ的》である。

「夢を(いい夢でも悪い夢でも)見るのは味気ない(夢の話ほど退屈なものがあろうか!)。それに反して幻想は、どんな徹夜や不眠の時間をすごすときも、ありがたい。それは、肌身離さず持ち歩けるポケット判の小説であり、どこででも、他人にとやかく思われることなく、列車の中でもキャフェでも、持ち合わせの時間をすごしながらでも、開いて見ることができる。私は夢が嫌いだが、それは、人間がそれにすっかり吸い込まれてしまうからだ。夢は《モノローグ的》である。そして幻想が私の気に入っているのは、それが現実(私が現にいる場所という現実)の意識に伴って共変異するからだ。」
ロラン・バルト『彼自身によるロラン・バルトみすず書房 p.128 1979