一つの著作へ圧縮するとしたら…

「印刷に出すための仕上げをしてゆくうちにわかったのは、思弁にだけ反対して向けられた批判とさまざまな材料そのものの批判との混合がまったく不適当で、展開をさまたげ、理解をむずかしくするということである。そのうえ、取り扱われる諸対象の豊富さと多様さは、これを一つの著作へ圧縮するとしたら、ただまったくアフォリズム的なしかたしか許されなかったであろうし、またそのようなアフォリズム的表現は、それはそれで、ある勝手気ままな体系化という外見を生んだであろう。それゆえ、私はいくつかの異なった独立のパンフレットで、法、道徳、政治等々の批判を連続させ、終わりに、一つの特別な著作で再び全体の連関、諸部分の関係を、ならびに最後にあの材料の思弁的取扱いの批判を、示すように試みるであろう。」
カール・マルクス『経済学・哲学手稿』序言(藤野渉訳)大月書店 国民文庫 1963 p.19