こうしたとりあつかい方が「ローマン的」なのである。

「中世のすべての芸術はこうした「比喩的」な意味で表現されている。こうしたとりあつかい方が「ローマン的」なのである。それゆえに中世の文学には神秘的なものがあまねくただよっている。…その文学のうちのすべてのものは、うつろいゆく月光にてらされたようにぼんやりとしている。内容はそうした形式でなぞのようにほのめかされているだけだ。…そこにはギリシャ文学で見られるような内容と形式との明白な調和は見いだされない。時には内容があたえられた形式をしのいでいるので、形式が内容に追いつこうと必死の努力をつづけている。…また時には形式が内容をすっかりしのいでいる。くだらんちっぽけな思想が巨大な形式にもられてよちよちあるいている。そうした場合にはグロテスクなおかしみが見られるのである。しかし、いずれの場合にもかたわの形しか見られないのである。」
ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』第一巻 宗教改革とマルチン・ルター