2006-12-27 大岡昇平 日本文学 「私は既に日本の勝利を信じていなかった。 私は祖国をこんな絶望的な戦に引きずりこんだ軍部を 憎んでいたが、私がこれまで彼等を阻止すべく 何事も賭さなかった以上、今更彼等によって 与えられた運命に抗議する権利はないと思われた。 一介の無力な市民と、一国の暴力を行使する組織とを 対等に置くこうした考え方に私は滑稽を感じたが、 今無意味な死に駆り出されて行く自己の愚劣を 嗤わないためにも、そう考える必要があったのである。」大岡昇平『俘虜記』 クリックください♪