本居宣長

人死ぬれば、善人も悪人もよみの國へゆく外なし。

「答。 人死ぬれば、 善人も悪人もよみの國へゆく外なし。 然るを 佛道の地獄の説に似たり とて疑ふは、いかゞ。 たとひ地獄と 全く同じ趣なりとも、 それにさはることなし。 神代の古傳、 何ぞ後世の佛道にはゞからむや。 そのうへ佛道の意は、 惡人は地獄…

漢意とは、漢国のふりを好み、かの国をたふとぶのみをいふにあらず、

「漢意とは、 漢国のふりを好み、 かの国をたふとぶのみをいふにあらず、 大かた世の人の、万の事の善悪是非を論ひ、 物の理をさだめいふたぐひ、 すべてみな漢籍の趣なるをいふ也。」本居宣長『玉勝間』

可畏き物を迦微とは云なり

「何にまれ、 尋常ならずすぐれたる徳のありて、 可畏き物を迦微とは云なり。」 本居宣長『古事記伝』神代一之

阿波礼といふ言葉は、さまざま言ひ方は変りたれども、

「阿波礼といふ言葉は、 さまざま言ひ方は変りたれども、 その意(こころ)はみな同じことにて、 見る物、聞くこと、なすわざにふれて、 情(こころ)の深く感ずることをいふなり。 俗にはただ悲哀をのみあはれと心得たれども、 さにあらず。 すべてうれしと…

吾にしたがひて物まなばむともがらも、

「吾にしたがひて物まなばむともがらも、 わが後に、 又よきかむかへのいできたらむには、 かならずわが説になゝづみそ。」本居宣長『玉勝間』玉かつま二の巻 「わがをしへ子にいましめおくやう」

詞のみにもあらず、よろづのしわざにも、かたゐなかには、いにしへざまの、みやびたることの、のこれるたぐひ多し

「詞のみにもあらず、よろづのしわざにも、かたゐなかには、いにしへざまの、みやびたることの、のこれるたぐひ多し、さるを例のなまさかしき心ある者の、立まじりては、かへりてをこがましくおぼえて、あらたむるから、いづこにも、やうやうにふるき事のう…