日本民族を崩壊させるものがあるとすれば、それはこの分裂にほかならぬ

「一つの民族の存在を防衛するものは、ただ武力のみではない。どんな爆弾も破壊することのできない団結こそ、一層強い防衛力である。あらゆる武装は解除されてもよい。ただ国民的統一だけは失われてはならない。その点を考えると、われわれの面しているもっとも大きい危険は、朝鮮半島の方から迫ってくる侵略にあるのではなくして、国内のさまざまな分裂にある。特に、国民的統一を突き崩そうとする野心家たちの策動にある。水は裂け目を伝って侵入してくる。日本民族を崩壊させるものがあるとすれば、それはこの分裂にほかならぬであろう。」

和辻哲郎
「民族的存在の防衛」