たえず優位な文化から岸辺を洗われてきた辺境の島国

「わたしたちの詩歌の歴史は、いつかどこかでとてつもない思いちがえをしてしまったらしい。これは、たえず優位な文化から岸辺を洗われてきた辺境の島国という歴史的な宿命を負ってきたことを考えると、痛いほど身に沁みて感じられることである。わが国では、文化的な影響をうけるという意味は、取捨選択の問題ではなく、嵐に吹きまくられて正体を見失うということであった。そして、やっと後始末をして、掘立小屋でも立てると、まだ土台もしっかりしていないうちに、つぎの嵐に見舞われて、吹き払われるということであった。もちろん、その度ごとに飛躍的な高さに文化はひきあげられた。でも、その高さを狐につままれたように、実感の薄いままに踏襲しなけれはしなければならなかった。」

吉本隆明
『初期歌謡論』


柄谷行人『批評とポスト・モダン』でも引用