バローズは、あらゆるみじめ、悲惨、非人間を体験する
「もう、
そのさきに踏み込んでしまったら、
自分が人間ではなくなってしまうような、
かろうじて生命だけは保たれてはいても、
もはや人間とは呼べない生命体に変貌してしまう、
そういう危険なボーダーラインにまで
降りていかなければ、
彼は自分自身をすら愛することができないほどの、
徹底した認識の男なのだ。
そのために、
ありとあらゆる種類の「薬物」が、
バローズを、
非人間への境界に、
いざなっていくだろう。
バローズは、
そこで、
あらゆるみじめ、あらゆる悲惨、あらゆる非人間を体験する。
『裸のランチ』は、
そういう壮絶な実験と体験のなかから生み出された、
二十世紀に書かれたもっとも美しい福音書のひとつなのである。」