「真夏の死」は「イワン・イリッチの死」に似ている

「最初に手にしたのが、


「太陽と鉄」のような


何やらちょっとうんざりさせられるところのあるものではなく、


信じがたいほど才気あふれる短編


「真夏の死」だったのは、


幸運だったと思う。


いまでも覚えているが、


それはレフ・トルストイの最良の短編


「イワン・イリッチの死」に似ているように感じられた。


ただし、


もっとずっと冷たく、


それゆえに謎めいていたが。」

グリゴーリイ・チハルチシビリ(沼野充義訳)
「ロシアに三島の毒が染みわたるとき」

新潮11月臨時増刊 三島由紀夫 没後三十年