十分回避しえた「むだな戦争」であったとする立場

「南北戦争は、

同胞が相争う「骨肉の戦い」であった。

そのすさまじさの一端は、

六一万八○○○人（北軍三六万、南軍二五万八○○○人）

という膨大な戦死者の数に明らかである。

独立戦争における戦死者は、わずか四四○○人であり、

第一次世界大戦で一一万五○○○人、

第二次世界大戦でも三一万八○○○人、

朝鮮戦争にいたっては三万三○○○人の犠牲しか出していない。

このような単純な比較からだけでも、

南北戦争がいかに破壊的な戦争であったかが明らかにされるであろう。

それだけに、南北戦争は

多くの歴史家やアメリカ国民の

強い関心の対象であり続けており、その研究成果は、おびただしい数にのぼる。

それらは大きく分けて二つの流れに整理しうるであろう。

一つは、南北戦争を、アメリカの近代化、もしくはアメリカ産業資本による国家支配の確立のために

避けて通ることのできない「不可避の戦い」とみる立場であり、

いま一つは、南北戦争の流血は、

当時の政治家が妥協すべきは妥協するという冷静で、

的確な判断力をそなえていれば、

十分回避しえた「むだな戦争」

であったとする立場である。」

有賀貞・大下尚一編
『新版概説アメリカ史』有斐閣選書 p.82-83

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