ミルチャ・エリアーデ

「ファルマは毎日書きつづけた。けれどもいまではひじょうに注意深く、ゆっくりと書き、書いたものを看守に渡す前に丁寧に読みかえしていた。自分でも知らないうちに、自分に重要と思われる事件に絶えず立ちもどっていることに気づいていたが、しかし彼が心配していたのは、止むを得ないくりかえしではなく、同じ話が様々に異なる視点から語られる際のずれが生み出しかねない混乱であった。」
ミルチャ・エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』p117