「私はいつでも学年試験の済むのを待ちかねて東京を逃げました。私には故郷がそれほど懐かしかったからです。あなたにも覚えがあるでしょう、生れた所は空気の色が違います、土地の匂いも格別です、父や母の記憶も濃かに漂っています。一年のうちで、七、八…

「香をかぎ得るのは、香を焚き出した瞬間に限るごとく、酒を味わうのは、酒を飲み始めた刹那にあるごとく、恋の衝動にもこういう際どい一点が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。一度平気でそこを通り抜けたら、馴れれば馴れるほど、親しみが…

「第一の、そして主要な意味で自然と言われるものは、そのもの自身のうちに、そのもの自身として[自体的に]運動の原理をもつものの本質である。」アリストテレス 『自然学』

「事物の自然とは第一義的に自体的に、そして付帯的にではなく、事物のうちに存していて、事物が運動することの、または静止することの或る種の原理であり原因である。」アリストテレス 『自然学』